ローカリゼーションの難しさ
投稿: 2022年9月25日 (最終更新: 2023年12月1日) • 4 分 で読了 • 1,587 語「ローカリゼーション」という言葉を知っていますか?ローカリゼーションの意味や目的は多種多様ですが、ここでは「外国のソフトウェアをその国の言語や文化に適応させること」と定義します。
ローカリゼーションは英語で “localization”、LとNの間に10文字あることから “L10N” と略されることもあります。
このローカリゼーション、「所詮英語を日本語にするだけでしょ」と思うかもしれませんが、そうでもないのです。
まず、英語を自然な日本語にすることが難しいです。
Mozilla JapanコミュニティのL10Nガイドラインでは、ローカリゼーションの目的を以下のように定めています。
Mozilla の日本語ローカライズコミュニティでは Mozilla 製品が日本語化されたソフトであることを感じさせることなく、日本語で自然に使ってもらえるようにと意識してローカライズを行っています。
L10N Guideline (Mozilla Japan Community) 最終閲覧: 2022/9/24
日本語化されたソフトであることを感じさせてはならない、言い換えれば、極論ではありますがそのソフトは初めから日本で日本語をベースに作られていると錯覚させるくらいである必要があります。
しかし、そこまで自然に翻訳するのは非常に大変です。
そもそも英語と日本語では文構造が全く違います。
英語は述語が先に来るのに対して、日本語は述語が後に来ます。それだけでなく、英語は主語をはっきりさせる傾向にありますが、日本語では主語を曖昧にすることが少なくありません。
ただ機械的に翻訳しているだけでは、最近のWindowsのように「???」な文章になってしまいます。
また、学校の試験における英語の和訳問題は、自然な日本語にすることも必要ですがどちらかと言うと文法や単語の意味を辞書通りに正確に訳す能力が求められます。一方のローカリゼーションでは、時には「原文に忠実にならない」という選択を取ることも必要です。原文に忠実であることよりも、自然な日本語であることを重要視します。
とは言っても、ローカリゼーションに参加したところで英語力を高められないというわけではありません。前提として基本的な文法知識や語彙が必要だからです。英語(特に和訳)が苦手で、かつテキストエディタを使える人であればローカリゼーションに参加するのがおすすめです。
ローカリゼーションでは、ときに文化の違いが壁になることがあります。
例をあげると、最近Firefoxというブラウザで「Colorways」という機能が追加されようとしているのですが、これは「自分のありのままの個性をブラウザの色を変えることで出そう!」という意図を含んでいます。
しかしながら、日本ではこういった感覚が欧米に比べてあまりありません。普段からアンテナを高くし、自分自身をアップデートし続けている人であればこの意図を理解できると思いますが、残念ながらそのような人ばかりではありません。
これをどのように訳すか、あるいはあえて英語のままにしておくか、2022年9月時点では現在進行形で活発な議論が行われています。
[v106] Colorways のローカライズ改善アイデアの募集 · Issue #339 · mozilla-japan/gecko-l10n
ローカリゼーションの難しさを2つ挙げましたが、苦労することが多いのは圧倒的に1番目の方です。2番目の文化の違いはあまり遭遇することがありません。
実は私も以前は、「ローカリゼーションなんて英語を日本語にするだけでしょ」と思っていました。しかし、実際にこの世界に足を踏み入れてみて、その難しさに驚愕しました。
日々使っているソフトが、言語や文化に真剣に向き合っている人たちによって日本語化されていることを知って頂けたなら幸いです。
私もSnapdropというファイル転送アプリを日本語化したSnapdrop JPというサービスを運営しています。
ぜひ使ってみてください。
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